« 名店BAR、実は閉店 | Main | 判例コメントはだれが書くの?2 »

どこにあるんだ法律書2 新宿紀伊国屋書店

新宿駅から徒歩圏で生まれ育った私にとっては、本の街といえば新宿、新宿と言えば本屋とヨドバシカメラの街であった。

自宅から一番近い書店は、小田急デパート11階にある三省堂書店だった。
胸くらいの高さの書棚のうえに、さらに建て増しする形で書棚が上のほうまで継ぎ足してあった。足元から胸の高さまではたて積みで、胸の高さのところに平積みのスペースがあり、またそこから上部はたて積みに陳列されるという変則的な書棚だったから、書籍の収納数が多く平積みの本が目の前に並んでいて本選びが楽しかった。「ノート」をとるのにもちょうどいい高さだったし、従業員が忙しすぎたのか寛容だったのか、座り込んで本を読んでいてもなにもいわれなかった。中学生のころはここで本を立ち読みするのが大好きだった。
高校生になると生意気にも、本を購入してから喫茶店で買ったばかりの本のページをパラパラと眺めるなんてこともやりだした。当時三省堂書店のすぐ横に大きな窓がある喫茶店があって、窓際の席に座ると西口のロータリーとスバルビルの向こうの高層ビル、そして高層ビルの間に沈む夕日がなんとも綺麗でとても大好きだった。
その喫茶店も小田急デパートのリニューアルで書店が10階に移動すると同時になくなってしまい、夕日を浴びながら本を読むという至福の時間は奪われてしまった。
ちなみに最近の再リニューアルで、10階の三省堂書店よこに昔のような喫茶店が復活した。きっと以前の喫茶店にたくさんのファンがいて要望が多かったに違いない。皆さんも一度いってみてください。
リニューアルした三省堂書店は普通の書店になってしまった。法律書も多くないからここではこれ以上取り上げない。三省堂はそのうち神保町本店についてコメントするつもりである。

個人的なノスタルジーは別として、新宿で書店といえば「紀伊国屋」である。
新宿駅東口から新宿通りを伊勢丹に向かって徒歩二分、新宿本店がある。
地下と1階の奥には化石や地図の専門店があって、おまけに五階にはホールまであって、書籍だけじゃないなにか特殊な雰囲気が漂う書店である。道路に面してエスカレーター、その横には新刊書売り場がある。この売り場、たしか昔は雑誌売り場だったと思う。でもいまは中止になった新宿歩行者天国から流れてきた客の冷やかし立ち読みに音を上げたに違いない、雑誌はエスカレーターを上った2階に移動してしまった。
エスカレーターといえばこの書店には、下りのエスカレーターが存在しない。
雑誌でタウンガイドやグルメ情報を立ち読みしようとエスカレーターで2階に上がると、もう降りられないのである。そこで油断してつい目の前の上りエレベーターに乗って3階にあがる、そこにも下りのエスカレーターはない、また油断して4階へのエスカレーターにのってしまうと、こんどはもうエスカレーター自体がなくなってしまう。上でも下でも移動したければ、混雑する店内の狭い階段か、もっと混雑するエレベーターを使わないといけないのである。
このエレベーターが3台あるのだけれども、小さくて狭いことこの上ない、狭いうえになんとエレベーターガールまでいるので、なおさら狭くなる。ここにエレガはいらないんじゃないかと思わせること、銀座伊東屋のエレベーターガールに次いで理不尽な印象である。
そうはいっても上手いぞ紀伊国屋、一度足を踏み入れた客は簡単には帰さない、よっ商売上手。ところが店内は油断して足を踏み入れてしまった客でごった返しているのでメチャ混みで、本選びどころではなくなっていることにも気づいてほしいところである。と、切に思っていたところようやく気づいてくれたのかどうか、新宿南口にもう一店、大規模な「南店」を出店したのが一昔ほど前のこと。本店前の道を南口方面に、ぱちんこ屋、ゲームセンター、成人映画館、成人玩具店、場外馬券売り場、ヴィクトリアスポーツ、など混沌とした町並みを通って徒歩15分、なんとも中途半端な距離に「南店」がある。

紀伊国屋書店新宿南口店は高島屋タイムズスクエアにある新しいビルだから、エスカレーターも上下についてるし、面積も広いし、本店よりもゆったり本が選べる。ただし客が少ないのは売り場面積よりも立地の問題かも知れない。高島屋タイムズスクエアは確かに新宿南口にあるのだが、ここは新宿南口をでたら一つしかない狭い横断歩道を渡って、高島屋デパートを抜け、東急ハンズを抜け、渡り廊下を渡ってやっと到着するというロケーションである、「新南口」を使えば少しはましだが、「新南口」自体が新宿駅の端っこの埼京線のホームのさらに端にあって利用頻度は低い出口である。

ここまできたらJR代々木駅のほうが近いんじゃないかと思ったら、まさにそのとおり、南店の目の前にはもう代々木駅のホームが見えているのである。店の一階出口前にも「代々木駅300メートル、新宿駅500メートル」という案内板があるから、この事実は紀伊国屋も認めるところであろう。

さて、本店1500坪、南店1234坪、あわせて2500坪超と、とてつもなく大きい新宿紀伊国屋だからとてつもなく品揃えがいいかというと、あにはからんや、そうでもないのである。「新宿紀伊国屋書店」とひとくくりにしてしまいたくなる微妙な近さだが、南店は本店の出城ではなく独立した支店なので、本店と同じように一通りの商品バリエーションを備えている。それも1000坪超の大規模支店だから洋書から法律書から学習参考書までなんでも置いている、ということはつまり、本店と商品がダブっているのだ。

法律書売り場にもその傾向は見て取れる、本店と南店で在庫の傾向は違うのだが、いまいち品揃えがよろしくない。そもそも、ビジネス書と法律書をごっちゃにして並べているので、純粋な法律書の売り場面積は驚くほどすくない。ジュンク堂だと図書館でしかお目にかかれないような書籍を売っていたりするのだが、紀伊国屋ではほとんどそういうことはない。
本店1500坪、南店1234坪、つまり新宿には池袋ジュンク堂2000坪にかなわない紀伊国屋書店が二店もあるということだ。

ありきたりな書籍はどちらの店にも置いてある一方で、在庫の少ない本はどちらかにしかないことも多い。南店で在庫がない本も、本店には在庫があることもある。カウンターで照会すれば調べてくれるが、本店では取り置きをしてくれるだけで、持って来てはくれない。本店まで一キロ近く歩くか、代々木駅から一駅電車にのるか、どっちにしてもなんか馬鹿らしくなってしまうのだ。

どうせなら、洋書なら南店、法律書なら本店、理工系なら南店、学習参考書は本店などなど、割り切って特化してもらえないだろうか。そうすれば面積は同じでも在庫を圧縮できるから、レアな在庫を数多く置くことができるはずだし、池袋ジュンク堂に対抗できるようになるのではないだろうか。

いっちゃ悪いが池袋はイメージが悪い、知的な印象がまったくない、本を買出しにいくのに池袋か新宿かとなれば、普通は新宿に足が向くはずなのである。だから新宿にある天下の紀伊国屋は、安泰なはずなのだ。なのに僕は勤務帰り新宿を通過して池袋のジュンク堂に行ってしまう。おまけにこの冬には、ジュンク堂が新宿に進出するという。旧三越新宿店跡のビルに入るというから、紀伊国屋を上回るような面積は取れないはずだが、池袋店のような割り切った売り場構成を仕掛けてきたら紀伊国屋はいよいよ敗北してしまうかも知れない。

それと、紀伊国屋書店の店内には椅子がない。いまどき一個の椅子もないなんてどうかしている。新宿駅から散々歩いて、広い店内をたくさんあるいて気分が悪くなっても、店内に喫茶店すらないので、トイレ以外では腰を下ろす場所が皆無なのだ。どうにかしてほしいものである。

|

« 名店BAR、実は閉店 | Main | 判例コメントはだれが書くの?2 »

Comments

本店が法律書、高島屋店がそれ以外という配置になるなら賛成。
法律書が高島屋店にいってしまうなら反対(笑)

ま、新南口が山手線ホームから直行できるようになればいいんだけどね。

Posted by: 町村泰貴 | 2004.07.25 12:16 PM

The comments to this entry are closed.

« 名店BAR、実は閉店 | Main | 判例コメントはだれが書くの?2 »