東京ブックナビ
東京ブックナビ
かつて「東京BOOK MAP」という書店ガイドがあって、創刊当時としては画期的なコンセプトで重宝していた。しかしネット時代でほんの買い方が大きく変わったといわれてからしばらくした2005年だったかに廃刊した。今見返してみると最終版の「ネット時代に対応!」というキャッチコピーがどうにもむなしい。
その頃「ブックナビ東京」という書籍も発売されたが、これもたしか2005年版だけで終わってしまった。
いま、書店がどこにあるかという情報だけなら、ネットをみた方が確実だ。だから無機質な書店ガイドというのは、役割をおえたのだろう。
やはり無理なんだろうか。このような書籍を執筆するには書店に対するよほどの思いれがないと続かないし、さりとて思い入れが強すぎれば書店に対する評価が偏ってしまう。本好きを通り越して書店好きを標榜するような人間はどのみち偏った人間に違いないから、客観的なデータ集的なガイド本なんか書けるわけがないのかもしれない。
それならいっそ偏見にみちた思いいれたっぷりの書店ガイドでなければだめだろうとおもっていた。
ブックカフェが流行ったこともあって、趣味性の高いガイド本はムック形式でいくつか発売されたが、かつてのガイド本のような網羅性なかったのが残念だった。
しかし、先日新宿紀ノ国屋でレジに並んでいたら、レジ横に「ブックナビ」が積まれているのを発見して、とりあえず即買い。クリーム色の表紙だったので、派手な緑色だった「ブックナビ東京」が衣替えした新版かと思ったが、家に帰ってよくみてみると「東京ブックナビ」であってまったくの別物だった。
新刊書店と古書店と図書館についての基本的なデータだけでなく、いくつかの書店については詳しい説明がふされているが、これがまた執筆者のおもいいれたっぷりの文章だからおもしろい。
そして主だった書店街のおすすめ喫茶店のガイドまで掲載されている。「書店巡りの後は喫茶店で戦利品を確認」という本好きの本能に沿った構成になっている。
ただ、強い思い入れが仇になったか、掲載されていない書店が多いのが気になる。現に存在している書店は最低限のデータとともに盛り込んでほしかった。
たとえば、渋谷駅ハチ公口前のセンター街入り口横の「大盛堂書店」は完全無視である、往年の大盛堂書店本店とは比べものにならない規模とはいえ、それはあんまりだ。
それから、成城大学正門間前の専門書店、「成城堂書店」も掲載なし。郊外の小さな書店とはいえ、成城学園駅ビル内の三省堂成城支店を地図付きで載せたのならついでにこちらものせてほしかった。
もう少しレアだと、代々木駅から明治神宮へ歩いていった突き当たりにある神道関係専門書店「BOOKS鎮守の杜」、これが載ってなくても困る人は少ないだろうが、せっかくマニア向けの書籍なのだから、こういうレアな書店こそ発掘してガイドしてほしいものである。
法律関係でいうなら、東京地裁地下の「至誠堂書店」も、お隣の弁護士会館地下の「弁護士会館ブックセンター 」も不掲載、これはまあ、たぶん人文系であろう執筆者の方には要求するのが無理かもしれないが、法律関係者としてはまことに残念。
それから全350ページの書籍の真ん中あたりに、実に14ページを割いて康芳夫という人のインタビュー記事が掲載されているのだが、業界では有名人かもしれないが、普通ならこれ誰?という感じである。なんか違和感。まあそのくらい偏った構成ということで、ここはポジティブに受け流すことにする。
とはいえ、待ちに待った書店ガイド最新版である。現在は類書がない以上、本好き、書店好きの人間なら即買い必携、ということで。
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