USB判例データベース

町村先生経由で知った商品だけれども、第一法規から判例2万件を収録したUSBタイプの判例集が発売されるとのこと。

http://www.daiichihoki.co.jp/dh/product/462572.html

★重要判例20,000件超を収録したUSBメモリー!★ D1-Law nano 判例20000


 ネット版だと19万件のデータベースところ、その中から2万件厳選したとのことだが、どうやって選別したのか、膨大な作業だったのか、あるいはなんらかの基準で一括して抽出しただけなのか、発売前なのでよくわからない。もしかしたら単純に判タの解説が付いているものだけ取り出しましたとか、そういうことかもしれない。

 ネットだと社のほうで更新がされるわけで、日々新しいデータが入ることになるからそれはそれで、便利なのだが、継続的な契約をしなければならなくなる。私のように職場で判例データベースを導入してもらえない立場だと、個人でデータベースに加入しなければならないのだが、個人の財布には結構痛い出費になってしまう。
 その点、USBで配布するとなると、おそらく2万円で買い切りなので、そのあとの出費なしで使い続けられるということだろうから、財布には優しいだろうか。

 「nano」という、アップルの影響受けまくりな名称の割には、iPhoneには導入できないようで、iPhone派の先生方はガッカリだろう

 ところで、USB配布だと更新は想定していないのだろうから、購入後に新しい判例をどうやって仕入れるのか、そのへんはカタログには全く書いていないようだ。
 もしかしたら、毎年2万円のUSBを買い替えなければならないのかもしれない。その場合は、買い替え直前には情報が古くなってしまう。

 ふーむ・・・・、せっかく画期的な製品を打ち出した第一法規には悪いが、もう一歩踏み込んだ企画をお願いしたい。

 たとえば、最近の私は「Evernote」という、マイクロソフトの「OneNote」をクラウド化したようなメモファイリングサービスに夢中なのだが、なんで夢中かというと、家のパソコンと研究室のパソコンと、通勤途中に使うノートパソコンと、手元のスマートフォンで、ほぼ自動で同期されたメモの束を閲覧したり編集したりすることができるので、普段の仕事を全部そこで行っておくと、「あ、きのう書いたデータを家においてきちゃったよ」とか、「忘れないうちにメモしたいのけど今やってもデータ移動するの面倒だなあ」などというときでも、いつでも作業できるので、それはもう無茶むちゃ便利なのである。

 このサービスのどこがいいかというと、各デバイスにデータを持たせて、それを同期させるという仕組みなので、出先で「あ、あのメモ書き読みたい」とおもったときには、手元のパソコンを開けば、すでにデータがあるという点である。
 万が一そこでネットにつなげられない場合でも、普段使っているデバイスであれば一昨日くらいの作業の中身はいつの間にか保存されいるので、大抵問題ないのである。
 つまり、各デバイスのローカルデータベースを、自動でちょっとずつネット経由で更新・同期しておいてくれるクライアントソフトおよびサービスである。

 そんな素敵な無料サービスEvernoteを使い慣れてしまった体には、USBで配布ですなんていわれてもいまいち魅力的に見えない。
 ここはひとつ、Evernote社とコラボして、というかクライアントソフトを売ってもらってカスタマイズして、判例データベースを販売してはどうだろうか。

 初めの2万件のデータとクライアントソフトはUSBで配布して、新しい判例は毎週20件位がネット経由でいつのまにかローカルデータベースに追加されている、という感じ。
 これなら万一ネットがない環境でも、最悪今週分の最新判例がないだけで、先週までの鮮度の判例データベースにアクセスできるのである。

 料金は、最初が20000円なら、後は月額1000円~2000円くらいでお願いしたい。簡略版なんだから、月に20~30件の追加だけでいいので、その程度の値段に抑えられないだろうか。

 セキュリティというか、サービス供給側が恐れるデータのまるごと複製とか複数での共同利用などについては、データベースの置き場所をUSBの中限定にして、クライアントの起動にはそのUSBが刺さっていることが必要で、更新アクセスにはIDが必要で、とする仕組みがつくれれば、おおよそ防げるとおもうのだが、この辺の仕組みはあまり詳しくない。

 さてさて、どこかの会社でやってくれないだろうか、ちょい出遅れている○○社とか。

 あるいは日弁連法務研究財団あたりが、新規サービスとして進出してもいいかもしれない。簡略版データベースなら、すでに運用しているし。

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レクシスネクシス

レクシスネクシス社が日本法・判例データベースを開始した。
早速トライアルのアカウントを取得して試用してみた。

収録されているデータだが、これはEOC社の「判例秘書」と同じだろうと思われる。判例タイムズ、金判、金法、労判のコメントが参照できるというラインナップからみて間違いない。
この「コメントを参照できる」というのは、ネット系判例データベースでは画期的である。ディスク系であればEOC社の判例秘書や判例タイムズDVDで参照できるのだが、こちらは値段が高い、全部そろえると百万近くになろう。しかしレクシスの料金は月額1万円と、随分とリーズナブルである。
先行他社にはかなり脅威なんじゃないだろうか。

さて、検索項目だが、「簡易検索」「詳細検索」がある。

簡易検索はキーワードが入れられるだけだが、ここに「NOT検索子」を入れることができるのが、判例データベースでは珍しい仕様だろう。これなら予見しうるゴミ判例を排除して検索することができる。

詳細検索は標準的だが、目を引くのは「独自収集判例」のフラグだ。
どうやら最高裁のページからデータを引いているようだ。
しかしこれらの独自収集判例は、各判例誌で取り上げられていないので、コメントはもちろんのこと、関連条文、類似判例の紹介すらないのが残念である。コストはかかると思うがぜひとも改善を望みたい。

収録している判例は、基本的に判決文の全文である。この点は新日本法規のマスターライブラリーよりもアドバンテージである。
検索のキメの細かさや、最高裁判例集の原文画像がないなど、LEX-DBに劣る部分もあるが、月一万円で使い放題と料金が安いのが強みだ。

とりあえずの印象では、基本的な性能は十分で、かつコストパフォーマンスが高い、まずは万人向けの製品なのではないだろうか。

しかし、せっかくEOCと組んだのであれば、なんとか権利関係をクリアして、判タ・ジュリストの論文もオプションで収録してくれれば最強の製品になるだろう。

また、ブラウザに表示されるデータは、パソコン上では読みやすいが、印刷すると読みづらいという欠点がある。これもせっかくEOCと組んだのであれば、当該ページの画像を表示し印刷できるようにすれば大変便利なので、ぜひとも検討していただきたい点である。

詳しい報告はまた後日。とりあえず速報である。


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判例データベース 4

前回までのお話は、判例を見たかったら「判例時報」とか「判例タイムズ」とか、いろいろあるのでそれを見てちょうだいなと、裁判所が下した判決が全部載ってるわけじゃないけれどもねと、まあそういうことですね。一言で言えることをずいぶんとだらだらとやってますなあ、かかか。

まず、裁判所が下した判決が全部掲載されてないという点について。
日本は国会で法律を作って、その条文を基に国民は行動しましょうという建前の、つまり成文法の国なわけで、必要な決まりはみんなあらかじめ法律にしておきますからということになってるんですが、とはいうものの、そんな何でもかんでも法律なんて作ってられないわけで、個別の紛争では「法律がないよー(泣)」ということはしばしばです。そんなとき裁判官は仕方がないから法律の行間を読んで判決を書くことになり、まあ裁判官の胸三寸というわけですが、だからってあてずっぽうにやってるわけじゃないんで、脂汗をかきながら真剣に行間を読むわけですな。そうまでして裁判官が法律の行間を読んだ上での判決なら、一度の裁判で使い捨てにするのはもったいない。そのエッセンスは後々似たような事件が起きたときには参考にさせていただきましょうというのが、つまり判例です。え?乱暴すぎですか?いいんです、今年は暴れん坊になってサンバを踊ると紅白見て決意しましたんで。さて、裁判官の苦労を参考にさせていただこうにも、いつどこでどんな判例があったのかわからないといけませんね。しかし、全国で一年間に下される判決は何万件やら、それはもうとってもたくさんです。判決にならなくても、裁判官が弁論準備室とかで当事者に「あんたの言い分じゃ、まけちゃいますから、残念!」とかいうので、あわてて和解したような事件だってたくさんあるわけで、そこで裁判官がなんでそう思ったのか、それも知りたいですよね、訴訟の当事者としては。しかしまあ、そんな内容が判タ判時に載っているかというと、ほとんど全滅。載っているのは主要なものばかりです。年間3000件くらいしか公開されないのではないでしょうか。あんまり公開されてない割には、裁判官は判例にこだわります。この論点についてはかくかくしかじかの判例があるので、それで決まり、というわけですね。成文法の国なのに、あまり判例に拘束されるのはどうかとも思います。

伊藤眞先生も『法律学への誘い』「本書を利用される方々へ」で「練達した裁判官の経験を持つ同僚裁判官から、判例がないとすれば伊藤の意見に賛成であるが、判例が存在する以上それに従うべきであって伊藤の意見に同調できないと主張されたことが一再ならずもあったことを思い出す」との伊藤正己先生のお言葉を引用されてます。(伊藤眞『法律学への誘い』有斐閣、どっちも伊藤でわかりにくいですが、どっちもマコツじゃないですよ、念のため。この本最近補訂版が出ましたから、皆さん買いましょうね。特にこれからロースクールはいる人。)話はそれましたが、そんなに裁判官が判例にこだわるというなら、判例はみんな見られるようにしておいてほしいもの。しかし、公的判例集と判タ判時に載ってるものしかないんですね。これでいいんでしょうかね。ただし裁判官も状況は似たようなもので、結局は公的判例集、判タ判時その他あれこれくらいしか見るものがないので、裁判官がどんな判例を参考にできるのか、という点では、訴訟当事者と大して変わりがないと思われます。

しかしまあ、これでいいんでしょうか判例の公開。判例も「法源」の一つだといろいろな法律の本にかいてありますが、肝心のその判例を調べることができないとすると、そんなもの法源にされても、「聞いてないよ」状態になりかねませんね。誰でも閲覧できる公的判例集と民間判例雑誌に載ってる判決だけが判例だっていいうなら、まあ論理的整合性はありますが、民間雑誌なんて民間人が適当につくってるわけで(この場合の「適当」とは、「条理に適い当を得た作業を以て」という意味ですよ、念のため)、そこに載った判決は判例となり、載らなかった判決は忘却の彼方ってあなた、ひどくないですか。

ひどいかどうかは別として、そうなんだからあきらめるほかありません。なんせ裁判官だって事情はあまり変わらないわけですから、裁判官が「不意打ち」で当事者の知りえないマイナーな判例を持ち出してくる危険はそれほど高くないわけですからね。

そんな状況について最高裁も問題意識をもったのか、最近では最高裁のホームページに、「最近の判決」というコーナーがあって、そこで結構たくさんの判決をみることができます。それでも数は多くなくて、見ることができる判決は主要なものばかり。ん?、ということは既存の判例雑誌に掲載される判決と、だいぶ重複しているということですね。そしたら民間法律雑誌を読まなくてよくなるでしょうか。なんとなく民業圧迫。いま民間雑誌に潰れられたら、国民がこまってしまう、という心配もあります。でもたぶん大丈夫、このあたりの話はまた別のエントリーにて。

一時期こんな噂がありました。「裁判所には秘密の巨大判例データベースがあって、限られた裁判官だけがそれを検索することができるらしい」。なんかエリア51 (UFOを保管して宇宙人を接待している米空軍基地、もしくはイチローのライト守備範囲)とかマジェスティック12(世界の政治経済宗教を自由に操作できる12人の超特権委員会)みたいな話ですね。でもこの話、あながちデマではないでしょう。この噂を耳にした時期から考えて、現在公開されている最高裁判所ホームページの判例情報、これがロータスノーツドミノというちょっと時代遅れのデータベースソフトで管理されているところからみると、試験段階で非公開だったころに噂として漏れてきたと思われます。いまはまたもっとすごいデータベースが裁判所内部では動いているかもしれないですね。最高裁での担当部署も組織改変があり、情報政策課という専門部署ができて、コンピューターに強い裁判官が就任したようです、楽しみですね。

とにかく、最高裁のホームページで公開されている判決文としても、ごく一部のものだけ、そして昔のものはほとんどデータがありません。裁判官だって結局公的・私的判例誌を漁って参考にすべき判例があるかどうかを調べるしかないのですね。そこで判例や法律記事の「索引誌」というのが登場するわけです。「法律関係雑誌記事索引」とか「邦文法律雑誌記事索引」とかいう名前の書籍です。ここらあたりは、いしかわまりこさんのサイトを見るか、「リーガル・リサーチ」といういい本があるので、そちらをみてくだいね。この本もロースクール入学予定者必読、かならず入学前に読んでおきましょうね。ところでこれらの索引誌は、年々紙で発行されるので、調べるのが大変。そこでなんとかコンピュータを使って検索できないかなあと、誰しも考えるわけで、あーようやく「判例データベース」に話が近づきましたなあ。

判例データベースの登場
この判例データベースが発達したのはアメリカです。アメリカは「判例法」の国ですから、平たく言うと法律は作らないで、何か事件が起きるたびに裁判官が「常識」で考えて判決をして、似たような事件が起きたときは、以前の判決に沿って判決を書くという次第です。乱暴すぎですか?いいんです今年はサンバ・・・(略)。

ということは、手持ちの事件でどういう判決が下されるか、下すべきかは過去の判例を捜して見なければならない、てことは判例が探せ出せなきゃ話にならんということで「索引誌」だけでなくてそれをコンピューターで検索したい、そしてネットで接続したいという要請が高かったのでしょうね。アメリカでそのようなサービスを始めた老舗に「レクシス」と「ウェスト」という会社があります。昔レクシスを使ったことがあります。まだインターネット幕開け前で、日本では確か丸善が代理店でした。ダイヤルアップで丸善のアクセスポイントにリンクして、画面はもちろんコマンドライン。もちろん全部英語。外国語が苦手なので一瞬で利用をあきらめましたな、秒殺。だからこれらのサービスについては、私は語る資格なし。詳しくは田島裕先生の著作などをご覧ください。

日本ではどうでしょうか。まず十年ほど前だと、ようやくパソコン通信が普及し始めたころで、個人のパソコンをネットにつなぐってこと自体大事件でしたから、データベース製品はもっぱらCD-ROMで提供されてました。思いつく製品といえば「判例マスター」「リーガルベース」くらいでしょうか。そのころすでに「判例体系CD-ROM」も「LEX/DB」もあったはずですが、それほど使い込んだ経験はありません。
これらの製品は、結局、判タ判時その他の公的判例集の「書誌情報」を集めたものです。つまりは「この判例は判タの○○号○○頁に載ってるので、中身は自分で見てね」というわけです。図書館の検索システムと変わりません。結局図書室の紙のバックナンバーを見なければならないのですから。それでも便利でしたね。それまではいろいろな索引誌をひっくり返したりして、判例検索も体力勝負みたいな趣でしたが、キーワードや裁判年月日で検索してあっという間に判例リストが表示されて、あとはそれをコピーして集めるだけ。らくちんらくちん。
でも人間、どんどん楽したくなるもので。判決の要旨くらいはそのデータベースに収録しておいておくれよ。いやいや、判決文の全文を収録していただきたい。まだまだ、その判決の意義とか類似判例とか、学説評釈情報、その他いろいろ解説なんかも収録してくれくれ。とまあ際限がないわけです。

洋行帰りのメリケン弁護士によると、アメーリカでは係属中の事件の訴訟資料まで全部ネットでみれるんだぜベイビー、とのことです。ほんとかどうか知りません。州にもよるだろうし、裁判所や事件の種類にもよるでしょう。まあ、いずれにしてもさすが判例法の国ってわけですかね、あれ、イギリスではどうなんでしょうかね。

まあ日本の法律考えるのに、海外海外言ってられないですから、次回は話を国内に戻しましょうか。最近充実しつつある、オンラインデータベースの状況と、使用感なんかをぼちぼちエントリーしていきたいですね。

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プリティーグッドパラリーガル

法律データベースといえば、アメリカだとネクシスとかウエストローとか、日本だとLEX/DBにマスターライブラリーなどが連想されるけれども、法律に関係するデータベースといえば、法律事務所で弁護士が受任したり相談した事件パソコンに記録しておくのも、これはこれでデータベースというわけで。
以前法律事務所でアルバイトを始めたとき、その事務所は受任事件がむちゃくちゃ多いのに、事件簿は紙のノートだった。事件を受任したときに、依頼者や裁判所などの情報を「事件簿」に書き込んで、事務所独自の事件番号を割り当てる。同じ番号を割り当てた分厚いファイルブックをつくって、事件の記録はそこに綴り込んでいくという方法で、原始的だけれどもそれなりに合理的だった。ただし、事件の内容は刻々と変化して、なにがどう変化したかについては事務所の一般秘書は裁判所に同行するわけでなし、次回期日をカレンダーに書き込むくらいしかしていないので、ある日弁護士に「A社の件でこのあいだ和解の相談した事件の記録出して」とかいわれても、優秀で気が利く秘書なら一発で記録を差し出すのだけれども、そんなベテランが不在で、A社が大口依頼者で何件も事件があったりしたらどれが和解までいっているやら、相手方の名前くらいわかればまだしも、これも結構おんなじだったりして、おおむね手上げ。事件簿をみて、終局してないA社の事件をリストアップして(もちろん手書き)、全部倉庫から出してきて、順番に見ていくしかない。

こんな仕事やってられるか。事件簿はパソコンで管理しようよ。事件処理の進捗もそのつどパソコンに入れておこうよ。とまあ、己が無能で気が利かないのを棚に上げる必要に迫られたので、あわてて簡単なデータベースソフトを自作しました。

まあ、おおむね好評で、バイトをやめるまでの数年でだいぶ機能を拡張しました。
法律事務所のワークフローやその特質は事務所ごとに異なるので、このソフトを人様にあげても意味がないだろうと思っていたのですが、パラリーガルクラブなどで全国のパラリーガルの皆さんの様子を伺ってみると、「パソコンで事件管理はどうすればいいかしら」みたいな質問が飛び交っていました。

そこで、バイト期間中に作ったソフトの特殊な機能を削除して、ベクターで公開することにしました。法律事務所事件管理ソフト「プリティーグットパラリーガル(PGP)」です。フリーソフトですから全国のパラリーガルのみなさん、使えそうならぜひ使って、ご意見をお寄せください。

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利用マニュアルはhttp://homepage2.nifty.com/okada_yoshihiro/pgp100qmanual.htm

ソフトの名称の由来はもちろん「かわいくて優秀なパラリーガル」ないし「かわいくてグッとくるパラリーガル」です。なんか私、変態でしょうか。変態がいやな人は「PGP」と略称で呼んでください。

それはいいとして、法律事務所用のデータベースといえば、仙台のK弁護士が、かなりソフトを作りこんでいます。ところがK弁護士の作品は「桐」というソフトで開発されていて、ユーザーもその「桐」を持っていないと使えないのですね。またK弁護士は自分の事務所で使うことを前提として作りこんでいるので、そのままではほかの事務所で使えないという弱みがあります。さらにいうならK弁護士はその作品をまだ一般公開しているわけではないので、普通は入手できないという欠点がありますね。残念。
私の「プリティーグッドパラリーガル」は開発思想の段階でK弁護士の作品に多くの影響を受けています。ここに御礼もうしあげます。

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情報ネットワーク法学会雑感

慶応大学で開催された、情報ネットワーク法学会を傍聴した。
二つのシンポジウムが並列で開催され、そのひとつ「P2P」をテーマとするシンポには、2ちゃんのひろゆき氏もパネラーとして参加していたからか、大層な盛況で、僕もミーハーだから顔だけ見に行ってみた。Tシャツ姿で、壇上に上がったあとでも、いろんな人から名刺を差し出されて困惑していたのが印象的だった。顔だけ見てもう一つのシンポへ。

テーマは「法情報検索教育の現状と課題」。内容は、えーっと、日本のロースクール教育についてのぼやきといった感じで、法科大学院は、法情報教育とか、ローライブラリアンまで気も手もまわらないんだろうなあと、実感した次第。
それよりも気になったことがあったので、一筆。

シンポでは「欧米の法律系データベースの充実はすばらしい、日本はまだまだ」という、いつもの話題も飛び出した。
そんなシンポジウムが一通り終わって、会場から質問があった。シンポのテーマとは少し離れていたか、マイクを取った国会図書館の法律文献情報担当者と思しき人物がこう発言をした「予算・人手の問題もあり、国会で蒐集する法律文献の書誌情報から、大学院生用の紀要を対象外にしようという意見もあるのですが、みなさまどうでしょう(要旨)」と。国会で発行している法律分権情報といえば、あの白い表紙の冊子体で、しばらくすると第一法規の「法律判例文献情報CD」に収録されるデータをさすと思われる。

驚愕した。「どうでしょうっ」て、そりゃトンデモないでしょう。予算に限りがあるのは仕方がないけど、いまさら収録点数を削ろうなんて・・・。
それを受けてパネラーの齋藤北星大学助教授が「有名な法律雑誌でも、過去にさかのぼると収録されていないことが多い・・・(後略)」と答えると、国会図書館の担当者は「近時採用書誌が広がってきているが、一万点程度が収録の限界なので、どこかで線を引きなおさないといけない(要旨)」「過去にさかのぼって累積させるのは非常に困難(要旨)」とのことであった。
手間がかかるのはわかるが、テクノロジーで何とかならないのか?そういう問題でないというなら、手間をかけない仕組みがつくれないのだろうか。

国会図書館には「納本制度」がある。およそ書籍を出版した出版社は、一冊を国会図書館に寄贈しなければならないという法律だ。出版社にそこまでやらせることができるなら、ついでに、「出版社は出版した書籍の書誌情報を電子媒体で国会図書館に収めなければならない」との法律でもつくったらどうか。それなりのデータフォーマットを決めておけば、送られたデータをしかるべく処理するのは訳もないはずだ。あっという間に完璧に近い書誌データベースの構築が開始できる。もちろん書籍の本文ではなくて、表題や著者名や目次データなどの「書誌情報」だけでいい。

過去の累積データが欠けているいる点についても、そのフォーマットに準じて、各出版社が自主的にデータを提供できる窓口をつくったらどうか。出版社が自分の雑誌の過去データが収録されてないことを残念に思うことはあっても、収録されたら困ると思うことはほとんどないはずだ。データベースに登録されるのであれば、手元にある自社のデータを喜んで提供するのではないだろうか。これなら過去にさかのぼる書誌データもあっというまに集まるし、ほとんどカネ手間もかからない。

問題があるとすれば、件のデータベースが充実するということは、商品としての第一法規「法律判例文献情報」の内容が充実するということだから、第一法規と競合関係にある出版社にとっては嬉しくないことかもしれない。

しかし、テクノロジーの進化で「データは集まりすぎて取捨選択が大変」な時代がくるのかとおもったら、収録そのものをやめるかも知れないとは。時代に逆行することななんとしてもやめていただきたいと、思った次第。

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判例データベース その3

判例の話からそれました。
法律の条文情報が調べらるようになった一方で、じゃあ判例はどうかというとこちらはまだまだであります。
そもそも判例はどうやって見ることができるのでしょうか。
判決になる前の裁判手続、これは自由に傍聴できることが原則です。裁判傍聴の仕方については別のページでね。
で、裁判手続の結果である判決文はどうやってみることができるか。
判決日に傍聴しにいくと、「主文」だけは誰でも聞くことができます。
でもこれではその主文に至った理由がわからないし、すでに終わってしまった裁判についてはお手上げですな。だから判決文をみせてくれーということになる。
判決文は裁判所に行けば見ることができます。
憲法八十二条は裁判の公開を規定してますからね、でもこれが「判決文の公開」の直接の根拠になるかどうかはちょっとよく考えてみないとわかりませんね。

判決文はどうやってみるのか。
まず裁判所に行きましょう。収入印紙百五十円と印鑑と身分証明書が必要です。
東京地裁であれば、民事訟廷記録係の中に記録閲覧室という窓口があるのでそこへ行きます。そこで申請用紙に

・申請年月日
・事件番号  平成○年(ワ)12345号 
・原告名  甲野太郎
・被告名  おかだよしひろ
・閲覧の目的  (その他に○をつける)
・事件の当事者との関係  (第3者と記入)
・申請人 住所 氏名
・閲覧等の部分 (全部と記入)

などを書き込んで窓口に提出し待つこと一時間から数日。記録係の部屋に判決文がない場合は、倉庫まで取りに言って探してこなきゃならないので時間がかかるわけです。全部紙の書類です。それが全部保管してあるのですから膨大な体積に違いありません。それでも原則みせてはくれるわけです。でもですね、すでに困ったことに気づいた方いますよね。
まず事件番号がわからない。自分や知り合いが当事者になっているならいざ知らず、そうでない限りは事件番号なんてわからないわけです。
東京地裁でなら裁判所で事件番号を調べる方法がないわけでもなかったです。14階の民事事件受付のフロアにコンピューターが置いてあって、当事者名等から係属中の事件を検索して事件番号を調べることができました、今はなくなっちゃいましたけど。当事者名の公開は別の項でも触れますが、プライバシーとの関係などありなかなか難しい問題です。
まあ、端末がなくなっちゃったのでもうどうしようもないわけです。
もっとも当事者名で検索ができたところで、今自分で抱えている法律問題と類似の裁判をやってる人の名前なんて知ってるわけないだろうというものです。
じゃあどうすればいいか、ためしに裁判所に電話してみましょう「あのーちょっと交通事故に遭ってしまって、参考になるような判例がないか教えてくれませんかあ・・・」・・・無駄です、教えてくれません。たいていは「弁護士会で法律相談をやっておりますので」「専門の判例雑誌が出ていますからそちらを参考に」てなセリフを頂戴することになろうかと思います「参考になるかどうか」なんてあいまいなこと裁判所の職員がいちいち相談に乗ってはいられませんし、職員はそのような職務にないわけで、あっさり断られても腹を立ててはいけません、逆にそんな質問の相手をまともにしてしまったら違法かつ税金の無駄というもの、そんなひまがあったら今やってる裁判をさっさと進めてくれというものです。

弁護士ならわかるのか
裁判所に行っても埒があかず「弁護士に訊け」といわれたので、じゃ、弁護士に訊いてみましょう。
弁護士に相談します「○○なことで困ってるんですが、裁判は勝てるでしょうか」。こう訊かれると弁護士もつらいところ。「絶対勝てるから私にまっかせなさい」なんていう弁護士はちょっと胡散臭いですね。「勝てませんね」なんてあっさり言われると、なんかやる気なさそうで頼む気しませんね。「勝てるかもしれないし、勝てないかもしれない」なんていわれるとわざわざ相談しにきたのが損した気分ですね。それでも「これこれこういう法律とこういう判例がありますから、勝つのは難しいでしょうね」なんていわるとちょっとがっかりですがあきらめがつきやすくていいかもしれません。
勝敗の見込みはいいから、どんな法律と判例があるの?と弁護士に訊いてみましょう。弁護士は法律の専門家ですから、どんな法律があるか答えてくれます。弁護士自身がそのとき知らなくても調べてくれます。素人には無関係としか思えない法律が重要だったりするので、やっぱり餅は餅屋、専門家に聞くのが手っ取り早い、ちなみに有料ですけどね。法律の専門家の弁護士だから判例にも詳しいです、素人よりは。有名で重要な判決は弁護士の資格をとる時にたくさん勉強しています。弁護士が知らない判決だって、どんな判例があるかどうか、調べてくれます。調べてくれるけど、調べきれるかどうかは保証の限りではありません。なぜなら、弁護士であっても判例情報の収集手段は限られているからです。

さっき裁判所に電話して冷たくあしらわれたときに「専門の判例雑誌がありますから」って言われましたね。そう弁護士はこの「専門の判例雑誌」を見るんですね。
「雑誌」ていうとなんだか少年ジャンプとか週刊新潮とかアンアンとかを連想しますが、そうではなくて、裁判所の判決を淡々と掲載している本が発行されています。これを普通は「判例集」といいます。
裁判所が編集して裁判所の外局(子会社?)である「法曹会」が発行している判例集は、「公的判例集」と呼ばれます。

最高裁判所民事 (刑事) 判例集
高等裁判所民事 (刑事) 判例集
下級裁判所民事裁判例集
とかいろいろあります。

一方完全な民間会社が発行している判例集は「判例雑誌」と呼ばれることが多いです。
判例タイムズ(判例タイムズ社)
判例時報(判例時報社)
これが二大総合判例雑誌
金融分野に限ったものとして
金融・商事判例(経済法令研究会)
金融法務事情(金融財政事情研究会・きんざい)
上の二つと合わせて四大誌と数えられることもあります。

そのほか
労働判例(産業労働調査所産労総合研究所)わたなべがずのりさんのご指摘で訂正
交通事故民事裁判例集(ぎょうせい)
とかいろいろ分野別に判例集が発行されてます。

詳しくはhttp://www.law.kobe-u.ac.jp/citation/04.htmを参照してください。

公的判例集・判例雑誌をどこで見ることができるのか、というとなかなか普通の人には難しい。近くの図書館で気軽にというわけには行きません。
弁護士だったらどうするか、主なものは自分で購入しています。自分で持ってなくても、弁護士会の図書館で閲覧するか、仕事仲間で持ってる人がいればそれを見せてもらいます。
それでもみあたらなければ出身大学の法学部図書館にいけば、閲覧できる場合が多い。みなさんも出身大学に法学部があるなら、困ったときは利用してみるのもいいでしょう。え、母校に法学部がない?そもそも大学出てない?そうですよね。法的災厄は学歴に関係なく降りかかります。こんなとき法学部のある大学を出た人だけが得をするというか、それ以外の人が判例情報にアクセスできないとしたら不公平ですよね。「法化社会」とかいうなら、弁護士増やすだけではなくてそのあたりもしっかり整備してほしいものです。ま、その問題は別のテーマとして置いておいて。弁護士なら大抵は法学部出身ですから、それらの判例集を調べられるとして、調べたらそれで完全かという問題が生じます。つまり「判例集には全部の判例がでてんのかよゴルァ」という問題です。答えをいうとノーです。ぜーんぜん少ないです。

ようやく判例データベースの話に近づきつつ、またまた続く・・・・

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判例データベース その2

人間、安寧に暮らしたかったら、その国にどんな法律があるのか、あらかじめ知っておくほうが幸せですね。「麻薬を使ったら無期懲役」なんて法律をオランダ人が知らなかったらきっと悲劇ですね。これタイの法律ですね、ちなみにオランダではマリファナはタバコ屋で売ってますから、オランダ人もびっくりですね。道路にチューインガムを捨てたら罰金○○万円なんてのも知らないと日本人でも困りますね、これはシンガポールね。
だからまあ、どんな法律があるのか知りたい、俺は知りたい、激知っておきたいんだよアニキ、ということですね。日本ならまずは手始めに六法を広げると。ポケット六法あたりだとぜんぜん収録数がたりない。六法全書っていう二分冊の分厚いのもあって、これが収録法令930件(平成十五年版)だけれども、それでも日本にある法律のうちほんのわずか。じゃあこれに載ってない法律はどうやって調べればいいかというと、各分野別に「特殊六法」というのもあります。でも種類が多すぎて、なんだか大変ですね。

そんなこんなで、どんなのがあるのか良くわからない法律ですが、国会で法律が制定されると「官報」に掲載されます。お役所がだす法律新聞といったところでしょうか。大きめの図書館に行けば置いてあります。政府刊行物販売センターなんかで買うこともできます。
定期購読すると郵送してもくれます。でも普通よみませんよね官報なんて。
おまけに官報に掲載される法律の条文はまったく新しい法律が制定されたときは別として「○○法第○○条の条文を次のように改正する」なんて調子で、改正された部分しか乗ってなくて、わかりにくいことこの上なし。それでも「官報に乗っけたんだから国民のみなさんも当然知ってますよねこの法律」ということなんでしょうかね。ちょっと困りますよね。
ちょっと困るので、民間の法律出版社が全部の法律を網羅した本を出版しております。
それならなんで「六法」の項で紹介しないのかというと、本屋で注文して買えるような代物じゃなくて、いわゆる「差し替え式」の書籍を購入する契約を出版社とすると、定期的に改正された部分が郵送されてきて、それを差し替えるわけですな。でもこの差し替えがとってもめんどくさいし、中途半端にすると大混乱になるので、別途契約すると「差し替え工作員」みたいな人が月に一度くらい来てくれて、差し替え作業をやってくれます。分厚い法令集を「さっと解いてさくっと入れ替えてすっと紐を通してきゅっと閉める」。これがまた「ザ・差し替え職人」とも言うべき技の持ち主で、たいていはなぜか女性です。
らくちんで便利なんだけれどもこの法令集、いったいいくらなのかといいうと、ぎょうせいの「現行日本法規」と第一法規「現行法規総覧」が21万円、新日本法規出版社「現行実務六法」はちょっと安くて3万円。
そんなに払ってられるか、おれは今だけちょっと法律が調べたいだけなんだい、という向きはどうすればいいか、というと従来はどうしようもなかったわけです。図書館へ行きましょう、ちょっとめんどうですが。
おれは税金だって払ってるんだから、法律のひとつくらい気持ちよくみせてくれたっていいじゃねーか、とおもったあなた、最近はインターネットで法令が調べられるんですよ、良かったですね。
いままでは紙で印刷すると出版するほうも読むほうも膨大なお金がかかった法令データも、インターネットだったらただ同然。良い時代になりました。

総務省法令データ提供システム。
http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxsearch.cgi

法律は国会でつくるだけじゃあなくて、各地方自治体で「条例」なんてのもつくってますね。これは各自治体もインターネットで公開の傾向にあるようです。
主だったところだと
東京都、大阪府、神奈川県、千代田区、大阪市、
そんなサイトを集めたのが鹿児島大学の「全国条例データベース」
http://joreimaster.leh.kagoshima-u.ac.jp/

まあこうやってなんだかんだと、法律を調べることができるようになってきたわけであります。

まだまだ判例データベースにたどり着かず、続く・・・

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判例データベース1

全国一千万人判例データベースファンのみなさんこんにちは。このページは日本にあまた乱立する判例データベースについて、一刀両断の批評を試み、結果的に返り討ちに遭おうという稀有壮大な企画であります。

判例データベースってのは何なのだ

でわ、まず手始めに、判例データベースがなんなのか、あたりから考えてみたいと思います。ところでですが、「データベース」の定義はインターネット上の様々な先人様にご教授いただくとして、さらに「判例」の定義が必要なひとは・・ってあなたはなんでこのページを見ているのか一抹の不安がよぎりますが、まあどうしても確認したい向きはこちらを参照いただくとしましょう。ところがですな、両者が組み合わさって判例データベースとなるとこれを積極的に考察した人はあまりいません。それもこれも、わが国では判例データベースがつい最近まで存在しなくて、ここ10年くらいで、ようやく商業ベースによる製品が出回り始めたという状況であります。

近時普通にデータベースというと、「アクセス」だとか「ファイルメーカー」だとかいう「データベースソフト」を使用して住所録を作って年賀状を出してみたりというのを連想しますね。あ、データベースソフトにはまだ他にも種類がありますな、「桐」とか、ちょい昔は「Ninja」とか「ゼロ」とか、ああ懐かしいなあNEC-PC98。まじめな業務用だと「オラクル」。こんなソフトウェアの豆知識とかは他のページに譲るとして、ともかくデータベースといえばパソコンで、というのが普通の感覚でしょうか。

ところが、論理的にはデータが存在して、それから一定の条件に当てはまるものを抽出できれば、みんなデータベースな訳です。であるから紙に印刷された電話帳もデータベース、一応。書籍も目次と索引がついてて、目指す情報にたどり着けるならデータベース、一応。カードに書き散らして山とつまれたメモ書きも、目当てのものがすぐに取り出せるならデータベース、一応。
二十年くらい前の知識人たちは、このカードにメモ書きを蓄積するって方法に痛くご執心で、いくつかの「知識人になりたかったら俺を見習え」的なハウツー本には、必ずありましたね、「京大式カードの使い方」
え、京大式カードなんて知らない? いいんです知らなくて、ただのB6サイズの厚めの紙切れです。

この紙に何でも調べたこと気づいたこと、いろいろメモして書いておく、上の方には見出しも書いておく。どんどん書き溜める。たくさん溜まったら見出しにしたがって並べ直して整理する。そうすると関連があるカードは一箇所に集まって整理される(はず)。であるからその一連のカードをおもむろに取り出し、ぱらぱらと見てみたり、机の上に並べてみたりするとあら不思議、バラバラだった断片知識が一気に体系的に把握できるとかできないとか・・・。
このカードはそれぞれ一枚しかないわけで、それをどの順番に並べるかで頭を悩ますわけです。だってひとつのカードはいろんなことに関連してるんだよ。見出しを五十音順に並べてもほしいカードがどこにあるのか、なかなかわからないんだこれが。そこで先人たちは様々な妙手を繰り出しました。一番ワラタのがパンチカード式。カードの端にいくつか穴をあけておく。その穴はそれぞれある情報と関連付ける。一つ目の穴は「Aについて」二つ目の穴は「Bについて」三つ目は・・(以下略)。
でカードに書かれている内容がAに関連のあることだったら、一つ目の穴の端をはさみで切り取る。Bに関連することなら二つ目の穴の端をはさみで切り取る。Cに関連・・・(以下略)

ある時Aについてのカードが見たいなあと思ったら、全部のカードを机の上でトントンと揃えて、一番目の穴におもむろに竹ひごを突き刺す。竹ひごごとカードの束を持ち上げ、そして振る。そうすると一番目の穴にはさみが入っていたカードだけがバラバラと床に落ちる訳ですな。それを拾い集めてまた揃える。今度は三番目の穴に竹ひごを通して振る。そうするとですな、床にはAとCについて書いてあるカードだけが散乱しているじゃありませんかさあお立会い。複合検索の実現というやつですな。ここまでくればもう立派なデータベース。ちょっと荒業だけど。
こんな強引なデータベースを考えているうちに、とうとう出ましたパソコンが。初めて使ったデータベースソフトは「アシストカード」だったかな。そうそう、この会社、社長がビルトッテンさんとかいってね、社長の理念とか言って、他社のデータベースソフトが十万円くらいするのに9800円とか破格の値段でソフトを出してきたのでようやく使ってみたわけですが。そういえばパソコンも東芝だったっけな。ダイナブックss3100。ハードディスクなんてついてなくて、使う度にフロッピーからOSをロードして、それからソフトをロードして、そいでようやくデータを読み込んでと、今から考えると便利なのかどうなのかよくわからん代物ではありました。
それでも情報カードをパソコンの中に入力してしまえば、千枚だって一万枚だって。検索もあっという間の出来事、感動とはこのことでした。データベースふぇち誕生の瞬間です。

<判例データベースに話がたどりつかないうちに 次回へつづく・・・>

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